培養士の使命。
それは、卵子や精子をお預かりし、そして育むことです。
本来、卵子と精子はお母さんの中で出会い、胚へと成長していきますが、
体外受精では、その過程を培養室で担います。
不妊治療の成功にとって、培養室の環境はとても重要なので、
わたしたちは卵子にかかる悪い影響を一つでも多く取り除けるように努めています。
培養士が、皆様と直接ご対面することは、ごくわずかでが、
“お二人の大切な精子と、卵子をお預かりしている”ということを第一に考えています。
皆様ひとりひとりに個性があるのと同じように、精子や卵子、胚にも個性があります。
これらの個性から、どうすればよい結果を出すことができるのか、
皆様の経緯を考慮しながら培養しています。
また、過去の経験や日本の学会で得た情報、
海外で成功した新しい技術や情報なども積極的に収集しています。
ひとりでも多くの方に赤ちゃんが授かるよう、卵子を見守り、お返しできればと思っています。
生命の源は、皆様から生まれるものです。
ご自身から生まれる生命の力を信じて、治療を共にがんばりましょう。
卵巣の中から、専用の細い針を使い「卵胞液」を採取し、その中から卵子を探します。
体への負担を少なくするよう、できるだけ低刺激な方法で排卵を促し、
採卵の成功率を高めます。
採卵した卵子を培養液の中で受精させます。
使用する精子は採精後、運動性の高い精子(運動精子)のみを取り出します。
受精の方法は、下記の2通りがあり、
卵子や精子の質や、治療状況を考慮しながら選択します。
シャーレ上で、卵子と精子を出会わせる方法です。
自然受精に近い状態を体外で再現します。
精子が自ら卵子に侵入することで受精が起こります。
顕微鏡下で、特殊な細いガラス管(ピペット)を用いて
精子を卵子に注入し受精させる方法です。
精子の状態や採取卵の状態により、
受精障害が予測される場合に選択します。
採卵後、受精した胚(受精卵)は、分割を進めながら発育します。
その発育環境を調整するのが、培養です。
通常移植されるのは、受精してから2〜3日目、または5日〜6日目になります。
その間、温度とガス濃度をコントロールし、
体内に近い環境をつくることができる培養庫(インキュベーター)の中で培養します。
タイムラプスインキュベーター内の様子
胚を子宮内に移植します。
胚移植には、いくつか方法があり、治療状況を考慮しながら選択します。
受精後、2〜3日目の初期胚を移植する方法です。
受精卵を5〜6日培養し、「胚盤胞」と呼ばれる着床寸前の胚を移植する方法です。
初期胚と胚盤胞を同じ周期で、連続で移植する方法です。
最初の移植胚が子宮内膜を刺激し、
次に移植する胚盤胞の着床率を高める効果があるとされています。