体外受精のスケジュールで、採卵をするためには、卵巣の中の小さな卵胞(卵子の入っている袋)を育てることが必要です。月経周期と排卵が順調な女性に、本来、排卵誘発する必要はありませんが、体外受精では、いろいろな目的で、ある程度の排卵誘発や、卵胞発育のコントロールをしています。例えば、上図のような、clomiphene/HMG(FSH) 周期が、現在最もよく普及している方法です。完全自然周期と、HMG(FSH)注射による刺激周期の折衷案のような方法です。月経の3日目に、超音波検査と血中ホルモン値測定をしてからclomiphene 製剤内服を開始し、8-9日目より卵胞発育をモニタリングします。発育卵胞の状態をみながら、適宜、HMGもしくはFSHの注射を少し使って、成熟卵胞に達した時点で、下垂体からのLHサージを起こすために、GnRHaのスプレーを点鼻します。LHサージが起きると、卵胞内の卵子は、成熟の最終段階に入り、卵胞液が貯留して巨峰くらいの大きさになった卵胞内に遊離します。精子と出会うための最後の準備をするわけですね。
まれに、スプレーの効きが悪くLHサージがしっかり起きていなくて卵胞内壁に卵子が固着している時や、もともと卵胞内の卵子が変性融解してしまっている場合は、どれだけ卵胞内を吸引しても卵子がとれなくてがっかりすることもあります。
また、脳下垂体の機能が低下している方は、自然排卵は難しく、clomiphene内服や GnRHaスプレーも無効なので、HMG(FSH)/HCG などの注射を使用する刺激周期が選択されます。